第7章
莉央視点
私はお母さんの目をまっすぐ見つめる。心臓が急に高鳴り始めた。聞かなければならないことがある。八年間、ずっと私を苛んできた何かが。
「お母さん、一つ聞いてもいい? ずっと、ずっと言えなかったことなんだけど」
「もちろんよ、なあに?」
卒業帽を直す手が、微かに震える。外の喧騒が大きくなるけれど、私の意識はお母さんの顔だけに集中していた。
「神山地方でのあの日、警視庁に保護された時……どうしてあんなに早く私を受け入れられたの? 私は、お母さんの一番つらい記憶を呼び起こすはずだった。なのにどうして、私の手を取って、家に連れて帰るって言ってくれたの?」
お母さんの顔が、さっ...
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